2010年08月16日

復活の山

2年前に来たとき、ザンザ降りの雨の中、F6下の釜でただ見上げるだけだった。
今はもういない森君が「F6を巻いて上部を遡行しよう」という提案をしたが、
彼には申し訳ないけど、F6を巻いて、「カイラギ」を登ったとは言いたくなかった僕は、降りることしか考えなかった。
懸垂をすると共に、どんドン遠くなるF6を見て、無念さが残った。
その後、僕は膝の靭帯を切り、2年に渡って満足のいくクライミングをすることが出来なかった。
その2年の間に、彼は亡くなり、カイラギは僕の中で、鉄砲水による行動不能による体育座りビバークと共に、想い出になろうとしていた。

そんな想い出になろうとしていたカイラギを再び登る対象として捉えることが出来たのは、ファイントラックの2名。膝の怪我は決して取り返しのつくものではないが、まだくたばる歳じゃない。最後にひと花咲かせたい。


8月7日の夕方、僕は2年前の9月と同じようにF6の下に立っていた。
以前にも増して威圧感があると感じるのは、この2年何もしてこなかったことに対する不安感の裏返しか?
F6の取り付きに昔はあったという大岩は今は影も形もなく、壁はびっしょりと濡れている。どうみても登るコンディションではないが、ここで敗退したらもう二度と来ることが出来ない気がした。
1ピッチ目、目指すラインにはかなり上まで残置らしきものは見えない。ちょっと取り付いてみると、支点はボルト以外に取りようがないことが分かった。落ちたらまずい出だしのところに、ボルトを1本埋める。かなり苦しい体制で打ち続けたため、足が攣り、途中から相川選手に交代。
この日は中段のテラスまでFIXを張る。

翌日は2ピッチ目の直上から始まる。水が流れ、明らかに悪いコンディション。ハングの抜けで全く支点が取れず、ビレイ点の状況も決していいとは言えないので、落ちたら致命的なこのピッチ。途中から相川選手に交代。フォローしてみると、中間部のピンが取れず、相当にランナウトしていた。
上部は色々な壁を登っている僕ですら、結構ぼろいと感じるほどのボロさ。第2登のときの記録を持っていったのだが、ボルトが打たれたと書かれている場所には痕跡すら見出せず。よく登ったなぁ。
そして3ピッチ目のトラバース。III級とグレーディングされているこのピッチ。どうしてどうして?といいたくなるような悪さが滲み出ている。目で見える範囲には支点になりそうなものはなく、落ちたときのことを考えると、いくらIII級とは言え、ザックを背負っていこうとするのは無謀なことだ。空荷で取り付くと、明らかに崩落が始まっている感じ。足元はドロドロでスタンスもかなり怪しい。1回両足がスリップして飛びかけたが、なんとか両手で耐え、崩壊中の被り気味の壁を強引に登り、そのまま薮コギをすると、F6の落ち口にたどり着いた。荷物を背負ってフォローした彼らは、引きつった笑いをしていた。

カイラギは厳しい。そして手を抜かない。この上には厳しいゴルジュ帯が続いている。いつもの年と違って、豪雪だった今年は、楽をさせてもらったところがあった反面、非常に苦労させられたところも出現する。この日は上部ゴルジュの終わりのところで、時間切れ。上見ても下見ても崩壊寸前の雪渓が続く場所で、オープンビバーク。しかも、夜中に雨にやられ、余計悲惨な目に遭うこととなる。

3日目の夜が明けた。崩壊寸前の雪渓を注意して越えると、稜線までは指呼の距離だった。
稜線で雨に打たれながら、登ってきた谷筋を振り返る。
厳しく手を抜かないその渓相にちょっとうれしくもあった。
ありがとう、カイラギ。



飯豊・玉川梅皮花沢滝沢遡行
2010/08/07-09
M.橋本剛、相川創(Finetrack)、木下徳彦(チーム84)


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posted by gorge13 at 22:08| Comment(2) | TrackBack(0) | Footmark in the mountain | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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