2012年06月04日

スラブの横綱

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金山沢奥壁に4年ぶりにやってきた。
越後のスラブに序列を付けるのであれば、この金山沢奥壁は横綱級であり、
その中でもここ第4スラブはKing of Kingと言われる存在だ。
この正月に亡くなった本山さんと、第3スラブを登りに来た時、いつかは登りたいと思っていたが、
取り付いて見てやはり偉大な壁だったと感じた。
敗退してしまったが、金山沢は僕にトライすること、課題を持ち続けること、憧れ続けることの大事さを教えてくれた。


…中央バンドから数えて2ピッチ目(通算12ピッチ目)。
このスラブの、最後にして最大の核心部が出てくる。長さにして約100m弱。
見るからに汚らしいルンゼに登路を取る。
これまで硬かった岩はとたんにボロくなり、周囲の水を集めるだけに岩は濡れ、支点を取るのも一苦労だ。
まともな支点は1箇所くらいしかとれていないので、スリップは命取りになる。この極めて悪いルンゼをドン詰まりまで登ると、右の壁にいつポロっと言ってもおかしくないボルトが現れる。登山大系にはIV級と書いてあるが、とてもそんな代物ではない。
3年ほど前には山登魂の治田=長島ペアがここで落ち、長島さんが脱臼し、決死の大脱出劇を繰り広げたところである。

ここからルートはルンゼから離れ右の壁に向かう。
ここでリードの英明さんはRCCボルトを1本打ち、右の壁へ決死のトラバース。
もう元の場所には戻れない。運良くあったクラックに、エイリアンの黒を突っ込んで、あぶみをかけて1mあがり、さらに右へトラバース後、直上するボルトラダーに沿って一歩上がる。
ここまでも十分悪い。
ここで心が折れた英明さんと選手交代。
自分達を追い詰めるかのように、第3スラブ側から大音響が聞こえる。少し時間が経ってから、自分達が登ってきたラインを大岩雪崩と土煙が通過していった。もう降りるという選択肢はなくなった…ショックを受けた。
しかし、ここからも試練のピッチ。残置ボルトはとても使える代物ではない。中には手で触っただけで取れた代物も。
とはいっても、ツルツルの垂壁には他に選択肢がなく、虎の子のボルトを埋める。
苦しい体制で打ちながら直上し、最後は細ブッシュ(と草)を強引に掴んで、右トラバース。
この時点で夜7時を回っていた。残りは1ピッチのはず。あたりは暗くなりかけていたが、これ以上移動することも出来ずに、垂壁の途中に奇跡的にあったバンドで腰掛けビバーク。足が宙ぶらりんになるが、仕方がない。
疲れもピークで、昼に食べるはずのレーズンパンを口に入れ、水を飲んでいるうちに、気がついたら寝落ちしていた。

真夜中、顔を打つ水のしずくで目が覚めた。
あ、雨だ。雨は急にひどくなる。
しかし、それに対して我々は何も出来ずにツエルトをかぶるのみである。
朝になっても、雨はやまなかった。
昨晩、易しく見えた周囲の壁は幻だった。壁は、濡れて厳しさを増し、暗い空が壁の傾斜を際立たせている。
英明さんリードでスタート。
事態は悪い方に進む。当初、考えていた左トラバースの後に右上するラインは、全く手の付けられないツルツルの壁であることが判明。
残りはあと40m。もうひと頑張りすれば、なんとかなりそうな距離だが、しかし左側のリッジは上部に垂壁が見え、一見してハマりパターン。
右をトライするにも、ギア不足の予感・・・。
手元に残るボルトの本数を考えると、ここで降りないと命に関わる。
ここで降りると二度と来ることはないかもしれない。
苦渋の決断だったが、下降することにした。

気の遠くなるような下降が始まった。60mロープで実に10ピッチ。
それも、ほとんど直線的に下降してのことだ。
ハーケンを打つリスも探すのに苦労する始末だ。
かといって懸垂に使えるほどの灌木もなく、手元のギアはものすごい勢いでなくなっていく。
最後は、奇跡的に壁にひっついていた場所から雪渓に上がった。
手元に残ったのは、わずかにスリングが4本、ボルト2本。
緊張の糸が切れ、汗がどっと吹き出してきた。

支点の類は極めて少ない、いや「ない」と言ったほうがいいだろう。
グレードは全体的に辛目で、IV級と書いてあるところはほとんど例外なく厳しいクライミングが強いられることになる。
大体、登山大系に「ギリギリのクライミング」と書いてあるのだ。IV級と易しい訳がない。

少しホッとした今だからなのかもしれないが、正直、この手の精神力を試され、一発の強さを試される山は、この年齢になると正直厳しい。まずはゆっくり寝たい。振り返るのはゆっくり休養をとってからにしたい。

2012年6月2日〜3日
越後駒ヶ岳・佐梨川金山沢奥壁第4スラブ
木下徳彦(チーム84)、佐藤英明(ぶなの会)
posted by gorge13 at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | Footmark in the mountain | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月12日

梅雨の合間に

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ニノ俣谷黒滝全景。これだけの水量の黒滝はそうそう見ないだろう。

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1ピッチ目をリードする木下。中間部のブッシュの中に突っ込んでます。

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1ピッチ目をフォローする相川。この下がヤヴァイ。

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3ピッチ目を登る宮城。あろうことかダイレクトに登っていき、この後、フォローの2人はものすごく悲しい目に遭うのです。死ぬかと思った。


台高・銚子川ニノ俣谷黒滝
2012年6月10日
宮城公博、相川創、木下徳彦
posted by gorge13 at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | Footmark in the mountain | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする