2016年07月03日

Water Climbing虎の巻〜知らないと損する水の流れの読み・水泳〜

Water Climbing を志すものにとって、泳ぎというのは避けて通れない道であることは間違いない。そこで、Water Climbingにおける水泳術を私見でウンチクしてみることにする。一般には、以下の5点が一般の水泳と明らかに違う点である。

・プールよりも確実に水温が低い。
・水流が強いので、負けないように泳ぐ必要がある(利用して泳ぐ場合もあり)。
・泳ぐ距離は短いものの、上陸に際して時間がかかるなど長時間水に浸かることが考えられる。
・低体温症などに対するケアが必要である(着衣水泳となる)。
・ザックを浮袋に使える。


【水の流れを読む】
 一口に泳ぐといっても沢の泳ぎはプールの泳ぎとは異なる。沢の泳ぎが難しいのは、流れのある水をいかに読みきって泳ぐかという点にある。沢の泳ぎの上手い下手というのは、単に水泳の技術だけではなく、水の流れをよく理解しているかどうかにもよるのだ。経験を積み重ねると、流れを読み、効果的かつ安全な泳ぎの技術を身につけることができる。こうした経験を積むことによって水の流れを判断することを、「流れを読む」といいう。このような能力は一朝一夕では身につかず、泳ぎの沢に行く度に注意深く流れを観察し、身をもって流れを感じ、時には痛い目にあって身につけていくものではある。とはいえある程度のセオリーはあるので私見ではあるが参考にしてみてほしい。

(1)流れの観察する
 釜や淵の形状や流れこむ滝の形状、水量などの色々な要素によって、様々な種類の流れが生じる。そのなかには遡行の邪魔をしたり、場合によっては遡行者を溺死させようとする危険な流れもまれに存在する。一方で、流れを上手く利用することで突破が容易になったりもする。やみくもに流れに突っ込むのではなく、まずはよく観察する必要があるだろう。水面上の流れだけが全てではない。縦方向に回転する流れは時として遡行者を水面下に引きずりこんだりする。あるいは水面下のハング下に潜れば流心を避けて突破できるかもしれない。シュノーケルや水中メガネを使って水の中をじっくり観察したい。二次元で流れをとらえるのではなく三次元で流れをとらえるのだ。慣れれば水面上の起伏や色の濃淡や流れを見るだけで水面下の状況をある程度推理出来るようにもなるが、百聞は一見にしかず。木の葉や空気の泡の動きをじっくり見よう。木切れを投げこんでみるのも一つの方法である。

(2)淵の突破
 滝などの落差のない流れは殆どが二次元の流れを読むだけでことたりるが、底に大岩があったり側壁に水流がぶつかる時などには三次元の動きもでてくる。水面が盛り上がっている箇所には底に岩がある可能性がある。場合によってはそこに立つ(レストポイント)ことができるかもしれない。淵の突破で重要なのは流心をいかに避けるかということと、澱みや逆に上流側に流れる反転水流をいかに上手く利用するかにかかっている。とにかく流れを良く見ることである。一般的には流れの中心、カーブしている場合には流れのアウトコースよりに流心が存在する。流れの両側、カーブしている場合には流れのインコース側に澱みもしくは上流に流れる反転水流が存在している可能性が高い。基本的にはこの澱みや反転水流の部分を上流側に泳ぎ、必要に応じて側壁を蹴ったりして流心をすばやく横切ることで弱点を繋げて行く。反転水流は流心が壁にぶつかる部分の上流側に生じることが多い。反転水流に乗るためには対岸の澱みを少し上流側に泳ぎ、流されながら流心を一気に突っ切るのがセオリーである。急流ではただ泳ぐだけでなく八ツ目ウナギ泳法を併用する必要があるし、ホールドの少ない部分から上陸する場合も多いので水面下のホールドを見つけやすいように水中メガネをつけていくとかなり楽になる。また、ライフジャケット・シュノーケルを活用すると泳ぐことに専念できるので突破力が増すだろう。流れの突破だけを考えるならば足ヒレも有効だろう。

(3)釜の突破
 落差を持った滝の流れこむ釜では滝の形状、水量、釜の地形などにより、複雑な流れが生じる。空中を落下する水には空気が混入され、落水点で周囲の水を巻きこみながら水面下に潜る。空気混入した白い泡状の水は比重が小さい為に浮き上がろうとし、釜の中でボイル(沸き上がる水流)を発生させる。ボイルは一般的に白く盛りあがったスポットでここから放射状に流れが広がっているのが一般的である。ボイルと落水点の間は白泡に巻かれる為、比重の重い遡行者の体は沈んで息が出来ないことが多く、水の抵抗が少ない為、泳ぐことも難しくなる。水面上においてボイルから落水点に向かう流れが存在する為、単純に下流に脱出するのが難しくなることがある。ここは一般にサラシ場といわれる危険地帯だが、流心を渡るためにはあえて突っ込むこともある。ボイルからの逆流(バックウォッシュ)が脱出不能の致命的な流れでない場合は下流に流されないで済む弱点になるからである。流心を渡りたいときにはボイルを越えるような気持ちで水に飛びこめばすんなり対岸に渡れたりする。
 ボイルから下流側には釜の形状によって違いは生じるが、「淵の突破」の項で述べた流心と反転水流が存在する。縦に長い釜の性質は淵とほとんど変わらない。円形に近い釜はボイルからほぼ放射状に流れが広がっていることもある。円形の釜で水面下が掘れているようなケースではあまり側壁に近づきすぎると下に潜る流れがあったりして苦しくなることもあるが、流れが散らばっている点で突破はしやすくなる。折れ曲がった釜を持つ滝では、落水直下やサラシ場をトラバースしないと上陸できないケースもある。いずれにせよ突破のセオリーは淵の時と同様、流心を避けながら澱みや反転水流などの弱点をつないで、一般的な上陸点である落水点直下を目指す。淵の場合よりも弱点がハッキリしている場合が多いのでアプローチはしやすいと思う。
 落水点直下付近ではサラシ場に向かう水勢が強くなるので注意が肝心である。万が一吸いこまれそうになったら、下流側に身を蹴り出せばボイルから側壁側に吹き出す水流にはじかれて、少し下流の澱みに脱出できることが多い。落水点の裏にスペースがあるなら思いきって滝の裏側に張りついてしまうのも一手ではある。水の中に潜ってしまえば、滝の裏をトラバースできる可能性もある。このあたりは滝の形状によってケースバイケースなので、水面下を良く観察したい。
 釜の中には稀にとびきり危険な罠もあるので、それを見抜く目を持つように努力したい。危険なのは脱出できない流れが存在するケースである。滝の落差や釜の大きさはほとんど関係なく、水量と滝・釜の形状がポイントである。ボイルの上流側から下流側に脱出できないような流れの釜は危険である。釜の広さ一杯に斜めに大水量の滝が流れこんでいるケースなどが代表例である。釜の幅一杯にボイルした水流が上流に流れるため、サラシ場から脱出する道は水底を這って行く位しかない。釜に飛びこむ前に頭の中でいざという時の脱出路を計算しておきたい。ビレイヤーにロープで引きずり出してもらうのも一手であるが、水流が強い場合、引きずり出せないこともあるのでロープに頼りきるのは非常に危険である。

【泳ぎ方のコツ】
 出来る限り力を温存して泳ぐ事が大事である。着衣水泳では、自分が考えている様に、長距離を全力で泳ぐのは難しい。へつりを交えたり出来る所では、泳いでいないことも多い。流れの緩い場所では、平泳ぎが多く、流れが早くなってきたら、クロールに切り替える。多くの場合は、ずっと泳ぎのみで前進するのではなく、水中のホールドを利用したり、狭いゴルジュでは側壁を蹴り込みなどの複合技術である。サラシ場の通過やチョックストン滝などの滝裏に突っ込む時には、全力クロールとなる。
 ギリギリまで陸上でへつってからドボンというのは、思ったほど効果的な技ではない。流芯を飛び越えたり、流れが早すぎる場合でなければ、最初から泳いだ方が楽である。また、あまり金物をガチャガチャと身につけすぎると泳ぎにくく、かなり辛い事があるので、滝の形状に合わせてギアを選んでから突っ込んだ方が良い。身を軽くして泳ぐのもひとつの戦法である。ヘルメットの装着はケースバイケースである。

 泳ぐ前には、出来る限り体から引っ掛かる様なものを外す努力をしたい。釜の中で他のギアと絡まって抜け出せなくなると命にかかわる一大事だし、首からスリングが外れて流れてしまうのを防ぐためでもある。


posted by gorge13 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ゴルジュ突破やろうぜ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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