2016年07月03日

Welcome to the water climbing world

沢登りの分野でも、ゴルジュ突破は、滝登り・泳ぎという沢登りの華ををふんだんに味わう事の出来る遊びでもあるにもかかわらず、篤志家向けの変態な遊びとして考えられているようだ。出来る限り泳いで、瀑水を浴びながらの水線突破は、泳ぎが一般的な技術ではなかった40年前と違って、もはや特別な技術ではない。クライミング能力・泳ぎの技術の発展に伴い、沢登りの捉え方も変わって来たと言える。自分の好きなスタイルで自己表現出来るのが沢登りの最大の魅力であるが、登れる滝を登らずして、泳げる瀞を泳がずして、沢登りの本当の楽しさを感じる事が出来るのだろうか?

たしかに水線を突破する沢登りには滝の突破と泳ぎをこなす事が最低限求められるが、高巻きという選択肢がないゴルジュの中で、遡行の障害となる滝や瀞を、様々なギアを使い、頭を働かせながらクリアしていく。それは、まさしくロールプレイングゲームそのものだ。

ぞくぞくしてくるような絶望的で窒息してしまいそうなゴルジュの中で、難しいゲームを解いていく様な面白さがいっぱい詰まってる究極の水遊び---これがゴルジュ突破だ。

しかし、この究極の水遊びには、いささかの危険が潜んでいる。登攀と水の危険だ。前者はプロテクションの構成の失敗による墜落が即グランドフォールという結果に結びつきかねないことであり、後者は低体温症や、白泡の大釜などでの突破の失敗による水難事故のリスクである。

過去には、とある未踏のゴルジュで、プロテクションの構成の失敗から、パートナーがグランドフォールして脳挫傷で集中治療室送りになり、その1ヶ月後には、別のメンバーが白泡で沸き返る釜から脱出できずに溺死するという2つの悲しい事故に遭ったことがある。両者の事故はゴルジュの中での事故の典型的な例とも言えるが、ゴルジュの中だけに救助活動などは非常に難航を極める。ちょっとした事故でさえ、事故者の命が危険にさらされる。

しかし、登攀能力だけでなく、泳力、確保技術、レスキュー技術も問われてくる究極の水遊びであるにもかかわらず、きちんとした技術書もなければ、未だに発展途上の段階である。ゲームオーバーはまさしく死そのものであり、テレビゲームと違ってやり直しは効かない。この辺りが、他のスポーツとクライミングが根本的に異なるところであり、ゴルジュ突破はその面をいっそう際立たせている。そのことを胸に刻み、ゴルジュ突破のリスクというものをきちんと理解した上で行ってほしい。
(2002年の岳人誌の連載を2016年改訂)
posted by gorge13 at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | ゴルジュ突破やろうぜ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする